たまたま向かい合って座った、
3歳くらいの小さな男の子とそのお母さん。
車窓の流れる景色にお母さんがせっせと幼子に語る。

母「今見えたあのお寺はな、ずっと昔からあるお寺で偉いお坊さんが建てたお寺なんやで。たくさんの人があのお寺にお参りに行って心が安らかになって・・・・」
子「あ! 黄色い車だ!」
母「お寺っていうのはな、お墓があるだけじゃなくてな、昔は勉強をするところでもあったんや。」
子「あ! 見てみて! 風船! 赤い風船や!」
母「昔は今みたいに学校というところがなかったからな、寺子屋ってところで勉強したり、お寺でも教えたりしていたんやで。〇〇くんももう少ししたら小学校に入ってたくさん勉強して、たくさんお友だち作るんやで。今から楽しみやなぁ。」
子「ほらほら! あの車大きい! ダンプカー!」
母「友だちがたくさん出来ればな、困ったときに友だちが助けてくれるんや。友だちは大切にせなあかんで。お母さんもたくさん友だちがおったわ。」
子「次、降りる駅や。」
母「お母さんの高校の友だちなんてな、卒業してから会社作って社長さんになったんやで。うんと勉強して頑張ったんや。〇〇くんもたくさん勉強して、たくさん友だち作って偉い人になるんやで。わかったか?」
子「降りる!」
母「ほらそんなせいたら危ないやろ」
私「あ、お母さん、バッグ。 忘れてます、はい!」
母「あ、すみません! 〇〇くん、あんたがせかすからや、どうもすみません」
子「ありがとう!」
2m四方の空間にその母と子と私。
ほんの1駅分。
ほんのすれ違いざま、
2〜3分間の短いドラマ。