
冷蔵庫を開けてしばらく止まった。
少し熱っぽくて頭が働かない。
いつもなら冷蔵庫を開きざっと見渡していくつかの献立が思い浮かぶが、今夜はまったくだめだ。
続いて冷凍庫の引き出しを見ると、一番手前に塩さばの切り身があった。
次に野菜室を見ると、中途半端に残ったキャベツ。チルド室には賞味期限の切れたベーコン。
塩サバをグリルで焼いて、ベーコンとキャベツは炒めて塩コショウでいいや。
それに常備菜のポテサラを添えて、みそ汁は新しいキャベツの青い部分と油揚げと舞茸をちぎって入れよう。

一人暮らしの時なら、これで御馳走だったが、
家族が増えるにつれて徐々におかずが増えていった。
「これだけ?」って言われるのが嫌だったのかもしれない。
毎食おかずは3種類作ると決めた。
今夜のおかずは3種類ではあるが、一つはグリルで焼いただけ、一つは常備菜を出しただけ、もうひとつは切って炒めて塩コショウしただけ。
そう思ってしまうのだ。
自分がこれを出してもらったらもちろん喜んでありがたくいただくし、手抜きだとまず思わないのだが、自分が出す立場だと「手抜きしちゃった」と思ってしまう。
妻も「もうそんな凝ったのじゃなくていいよ」って言ってくれている。「お漬物とご飯とお味噌汁だけでもいいんだから」と。
家族も減って今では以前の半分以下。おかずも2種類の時もあるし、そのうち一つが常備菜と言うこともある。
子供の成長のためにと頑張ってきて、夫婦だけの時は楽しい時間をと思ってちょっと変わった料理も作ったりした。それを作っている時間も充実していた。
これからは料理を「楽しむ」ことをメインにして、「役目」と言う要素を排除していこうかと思う。楽しめない時はそれなりで、楽しもうと思う時は思う存分。
そんな感じでいいかと。
仕事の方も似たようなところがあるが、こちらは最低限のラインは死守しつつ勝手に体が動いてしまうのでいつもの脳のある部分を使って出来るのでまだ大丈夫だ。
ただ体にガタが来ている事は間違いのない現実であり、それ相応に対処しつつ慎重にやっていかないといけない部分も多くなった。
「歳を取ると言う事は」、なんてまだまだそれを語れる年齢ではないかもしれないが、ちょこっと先人たちの言っていたことがわかるようになってきた。
「年をとるとなぁ・・・」って言っていた事は「なるほどそう言うことか」と。そう言った謎が解けると言うのは「なぜなに坊や」だった私としてはうれしいところでもある。