山を歩いてみたいと思っても、
最初はどこから入るのかさえ、全くわからなかった。
でも、見えている近くの山でいいから歩いてみたいなって思っていたら、
不思議なことに、「一緒に歩きませんか?」と言う人がひょいと目の前に現れて、
その方が案内してくださって、
そこからいろいろわかってきて、
ひとりでも山を歩けるようになったら、
そこがもう一つの自分の世界になった。
いつもの「人間界」で暮らしていて、
いろいろイヤなことがあった時でも、
もう一つの世界に入れば、
なぜかそこは呼吸が楽だった。

悩みのほとんどは人間関係なんだなって思った。
たくさんに人に助けられながら生きているけど、
それだからこそ、
みんなに気を遣ってしまう。
もうひとつの世界に頭を突っ込んで、
その世界を少し歩いてみたら、
いつもと違う絵をイメージ出来た。

どう逃げるかじゃなくて、
どう進むか。
どう乗り越えようかじゃなくて、
どう付き合っていくか。
そんな風にイメージ出来た。
いつもの部屋の中でもいいから、
テレビを消して、パソコンも閉じて、スマホも電源切って横に置いて、
子供の頃に浸った世界に再び頭を突っ込んでみると、
何かが再び動き出した気がした。

それが50代の始まりだった。
そして60代の暖簾をくぐっていく。