WOWOWのドラマは好きでよく見ている。どれもハズレのない良質な作品が多い。
このドラマも期待以上の作品だった。

江口洋介主演 文句なしにかっこいい。
そして、今回特に目を引いたのが、いつも嫌な性格の役で出てくる「矢島健一氏」。弱いものに強く、強いものには弱いというキャラクラーを演じることが多いが、このドラマの中ではそう言った性格を踏まえながらも強いものに立ち向かっていく人間を描いている。
若手社員には、林遣都くん。この俳優さんは感心するほどどんどん上手くなっていく。
萩原聖人氏の演技もいつもながら素晴らしい。
ドラマは、バブルの後の山一証券の自主廃業に関しての話。自主廃業とは言え、実際は不正が明るみになって、大蔵省にも見限られて証券取引の免許取り消しということ。
その不正の実態を、内部調査機関である江口洋介率いる部署が最後の最後まで山一証券の中で戦い、しんがりを努めたかという話。
守るべき会社もなくなり、それでも真実を追求していく。同僚たちにも嫌われ、なぜ今更恥の上塗りをしなければならないのか?と。それを暴いた先に何が待っているのか?
それでも誇りある山一の社員として、どうして我々は自主廃業せざるを得なかったのか、納得がいく理由がなければならない。そんな気概を感じられた。
人はある時、「背信の階段」に足をかけてしまいそうになる。それを一歩でも登ってしまえば、それ以降は嘘に嘘を重ねなければ辻褄が合わなくなる。
やがてその階段をもう一歩登ればその下に部下が出来、その部下も同じ階段を登らないといけなくなる。
上り詰めるしかない。そのためにはどんどん嘘が嘘を呼び、やがてそれが当たり前になっていく。
登り切ったところから見える景色はどんな風景なのだろう?
一歩踏み出すあの頃に戻りたいと思っていた時もあっただろう。しかし、今更どうすることも出来ない。
私たちの日常も似たようなところがある。規模は全く違うにしても自分自身の中での「自分についた嘘」はいつもつきまとう。嘘をついたことも忘れていることもある。
今の自分に対して、この江口洋介のチームに「自分の何が悪かったのか」、「いつどこから狂っていったのか」を調べて欲しいくらいだが、「今更それを調べてどうする?」とも思う。
今の自分を受け入れて、これからどう生きていくべきか。それが大切なような気がする。企業と一個人では違う。一個人であればいくらでやり直しができる。
しかし、後戻りできるくらいのところでしっかりと良心と照らし合わせて調整しておかないと、やり直しも出来なくなるところまで背信の階段を登ってしまうこともあるだろう。
下から水が押し迫ってくるから仕方なくもう一段登る。また水が上がってきたからもう一段登ろう。それの繰り返しで後戻り出来ないところ行ってしまう。もう水に濡れるのは嫌だから。
水が深くなればなるほど後戻りはきつい。まだ水底が見えるところで階段を登るのをやめないといけないが、それがむずかしい。
たくさんの人が絡めば絡むほど、後戻りは難しいのだろう。
そんなことをひしひしと感じられた良質のドラマだった。