
「時をかける少女」「サマーウォーズ」の細田守監督が、「母と子」をテーマに描くオリジナルの劇場長編アニメーション。人間と狼の2つの顔をもつ「おおかみこども」の姉弟を、女手ひとつで育て上げていく人間の女性・花の13年間の物語を描く。「おおかみおとこ」と恋に落ちた19歳の女子大生・花は、やがて2人の子どもを授かる。雪と雨と名づけられたその子どもたちは、人間と狼の顔をあわせもった「おおかみこども」で、その秘密を守るため家族4人は都会の片隅でつつましく暮らしていた。しかし、おおかみおとこが突然この世を去り、取り残されてしまった花は、雪と雨をつれて都会を離れ、豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住む。「時をかける少女」「サマーウォーズ」に続いて脚本を奥寺佐渡子、キャラクターデザインを貞本義行が手がけた。第36回日本アカデミー賞では、最優秀アニメーション映画賞を受賞した。
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この映画は、ひとりの少女がある男性と出会って、恋をして、結ばれて、子供ができて、その子を育てていくという映画。
しかし、いわゆる普通とは違う点がある。
それは、恋をした男性がおおかみであったこと。そのおおかみはふとした拍子に人間の姿からおおかみの姿に変わる。生まれた子もその血を引き継いで、感情が高ぶるとおおかみに姿を変えてしまう。
子供がふたり生まれてしばらくは幸せな日々が続いたが、ある日突然に父親はおおかみの姿で死んでしまう。そして、妻の前で動物として処理されてしまう。
そこから人間の母とおおかみの子ふたりの過酷な生活がはじまる。
姉と弟のふたり姉弟。ふとした感情の高ぶりで姿がおおかみに変わり、四つ足で走り始めてしまう。それだけに周りの人たちとは一緒に馴染めず、そのうち山の奥の一軒家で暮らすことになる。
そこで他の人たちとは交わらずに暮らそうと思ったが、そのうち山の村人たちとの交流がはじまる。村人はみな親切でいろいろと助けてくれることになる。
しかし村人は、子供たちがおおかみの子であることは知らない。
姉は活発であったが、学校に行き出してから少しずつトラブルを起こすことになる。そして、徐々に人間になろうと頑張る。
弟は学校には馴染めず、姉とは逆に徐々に山に入りおおかみになろうとしていく。
そんな二人を精一杯守り育てていく母。
想像を絶するような困難にもめげずにいつも笑顔で乗り切っていく。
乗り切って行くという言葉は似合わない。どうにか懸命にやっているうちに時が過ぎて行くという感じ。
それを後になって娘に語り、その娘が映像と共に我らに語って行く感じで映画は進行する。
そのような苦難の育児であったのだが、
母は「今となっては、ひとつの物語のように思う」というような感じで語る。
これはすごく納得。自分も5人の子を育ててきたが、今振り返って見て
「本当に自分は5人も育ててきたのだろうか?」と思ったりする。
まったく夢のような、ひとつの映画を見たような記憶としてしか思えないのが不思議なのだ。
「あぁ、そんなこともあったなぁ」と。
人の一生なんて、過ぎてしまえばそんなものかもしれない。
今となっては、ただ懐かしいばかりだ。