
乃南アサの同名小説の映画化。林遣都と市原悦子。
犯罪に手を染めてきた孤独な青年が、逃亡先の村で出会った人々との交流を通して再生していく姿を描く。親に見捨てられて人生を諦め、女性や老人ばかりを狙った通り魔や強盗傷害を繰り返すようになった青年・伊豆見。逃亡の末に宮崎県の山深い村にたどり着いた彼は、怪我をした老婆スマを助け、彼女の家に世話になることに。当初は金を盗んで逃げるつもりだったが、スマや村人たちの温かさに触れるうちに、伊豆見は失いかけていた人間性を取り戻していく。そんな中、ある事件をきっかけに10年ぶりに村に帰ってきた美知と知り合った伊豆見は、自分が犯してきた罪の重さを自覚するようになり、人生をやり直すことを決意する。
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もう何百年も何も変化なく暮らして来たんじゃなかろうかと思うほどの田舎の山村に、若い犯罪者が迷い込んだ。そこで暮らす老人たちと接するうちに、少しずつささくれた心が癒されていく。
田舎の村は最初から最後までずっと変わらない。それに比べて迷い込んだ若者はすごい勢いで変化していく。閉鎖的で保守的であるという印象の田舎の小さな村だが、そこには砂漠のような街で荒んだ心になってしまった若者をどのように変化させるのか、それを林遣都が上手に演じている。
こんなにも人間は変われるものだろうか?小さい頃から染み込んだものは抜き切ることがでいるのだろうか?いささか疑問ではあるが、こうであって欲しいと願う気持ちは強い。
生まれ育った環境の中で、当たり前に生きてきただけなのに、それが悪人となってしまう不幸。時代が時代なら強く生きられたかもしれないのに、平和な世では犯罪者になってしまう不幸。野生ならすぐに食い殺されてしまっただろうが、今の世なら強くいける。たまたまその環境で生きて、それなりに生きてこれた。これだけでありがたいことだと感じる。
すべては、たまたま上手くいっているように見えるだけかもしれない。立派な人生なんてない。たまたまそうなっただけ、なのかもしれない。
頑張って頑張って今の生活を手に入れたと言える人なんてどれだけいるのだろう?