
天才数学者ナッシュは、周囲に変人扱いされながら研究に没頭、やがて精神状態に異常をきたすようになり、病との闘いが始まる。ゲーム理論の基礎を築いたノーベル賞数学者ジョン・ナッシュの伝記小説を、オスカー俳優ラッセル・クロウを主演に「アポロ13」のロン・ハワード監督が映画化。
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2時間15分もあったの?と思うくらいあっという間に感じた。それだけ映画に集中していたのだろう。ラッセル・クロウとジェニファー・コネリー二人の演技に見入ってしまった。
現実と幻覚の区別がつかなくなり、幻覚の人物に話しかけるようになり、それに振り回される。なんとも恐ろしい病気だ。日常生活も出来なくなり、夫婦も崩壊してしまいそうになるが、妻であるジェニファー・コネリーがどうにかどうにか迷いながら悩みながら苦しみながら必死にそれを守り続ける。
この主人公であるジョン・ナッシュ氏は実在の数学者であり、この映画が上映された時には健在であったし、映画のエンドロールでもそのように紹介されていた。
しかし、その数年後にある授賞式の帰り道に、夫婦で交通事故で車から投げ出されて事故死してしまう。なんとも衝撃的な結末。もちろんこれは映画では表現されていない。
ジョン・ナッシュの「ナッシュ均衡」とは、理論として書くと難しくてうまく説明できないが、現代でも当たり前のようにその考え方は使われている。例えば今回のコロナ騒ぎでどうしてマスク不足が起こるのかも「ナッシュ均衡」で説明ができるという。オイルショックでのトイレットペーパー買いだめとか、銀行が危ないという情報に、預金引き出すために銀行に殺到するとか。携帯電話の契約を大手キャリアにするか、格安SIMにするかとか、家電量販店の価格設定とか、色々な場面で役に立っている。
最後まで観て思ったことは、みんな誰しも幻覚というものは見えなくても、過去やら思い込みやらを引き摺って、それに囚われながら生きているということ。それはもう幻覚と一緒なのかもしれないと思った。自分が行動を起こせないのも、色々と架空の人物を登場させてはそのできない理由を語らせる。それが現実だと思い込んで、そこからその世界から抜け出せないのかもしれない。
自分は一体どの世界で生きているのだろう?そんなの決まっているだろう、キミと同じこの世界だよ! 本当かい? え?違うのか?
最後のシーンでは一粒の涙をこぼしてしまった。
「理を導く理論や方程式を求め、それに一生を捧げて来た。幻覚にも迷い。そして戻ってきた。その中で人生で一番大切なことを学んだ。謎の愛に満ちた方程式の中に”理(ことわり)”が存在するのです。今夜、私があるのは君のおかげだ。君がいて私がある。ありがとう」
「君がいて私がある。ありがとう」
人生の中で妻にこんなセリフを堂々と言える機会があるなら、それは最高の人生であると思って間違いない。
素晴らしい映画だった。