
第159回直木賞を受賞した島本理生の同名サスペンス小説を北川景子主演、堤幸彦監督のメガホンで映画化。父親を殺害した容疑で女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女の「動機はそちらで見つけてください」という挑発的な言葉が世間を騒がせる中、事件を取材する公認心理師・真壁由紀は、夫・我聞の弟で弁護士の庵野迦葉とともに彼女の本当の動機を探るため、面会を重ねるが、二転三転する環菜の供述に翻弄されていた。真実が歪められる中、由紀はどこか過去の自分と似た何かを感じ始めていた。由紀の過去を知る迦葉の存在、そして環菜の過去に触れたことをきっかけに、由紀は心の奥底に隠したはずの「ある記憶」と向き合うことになる。由紀役を北川が演じるほか、迦葉役を中村倫也、環菜役を芳根京子、我聞役を窪塚洋介がそれぞれ演じる。
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想像していたよりもかなり出来の良い映画だった。
登場人物の女性が、ほぼみんな病んでいる。それも過去のおぞましい出来事によって狂わされてしまっている。それを起こしてしまっている両親もまた病んでいる。その負の連鎖によって起こってしまった偶発的な殺人事件。
その連鎖をどこかで断ち切りたい。
男性も病んでいる。みんなみんな負の体験を奥底に抱えながら生きている。
数少ない成功体験と、どうにも逃げられないトラウマやカサブタだらけの心と体、それと耳から仕入れた不確かな情報だけで、目の前の出来事に対して決断していく毎日。
どうにもならない結果に対して責任を負わされる。
「それじゃあの時私はどうしていれば一番良かったんだよー!」と叫びたい毎日。
終わってからならどうとでも言える。
「そんなんバカでもわかるでしょ!」なんて平気でいう人。
「ふつう、そういう時ってこうしない?」とか、経験したこともないのにいかにも自分なら上手にできたみたいにしたり顔で語る。
「それじゃお前、実際そうなったらできるのか?」
みんな偉そうに「自分だったらうまくできる」みたいにいうが、実際にはそんなやつはいない。いつでもみんなを見下したいたいだけだ。そんな状況になったのも日頃の行いが悪いんだよって、自業自得だよって。
でもみんな、当たり前に生きているだけ。どこで狂ってしまったのだろう?何が原因なんだろう?自分が悪いの?
いや、自分は悪くない。あいつのせいだ。
そう思わなければ自分が壊れてしまう。
そんなこともどうでも良くなった時に、
「動機はそちらで見つけてください」という冒頭のセリフが出てくるのかもしれない。
その動機を見つけた時に、彼女の傷が少しずつ治癒に向かうのかもしれない。