
「桐島、部活やめるってよ」の原作者として知られる朝井リョウが、平成生まれの作家として初めて直木賞を受賞した「何者」を映画化。就職活動を通して自分が「何者」であるかを模索する若者たちの姿を、佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之という豪華キャストの共演で描いた。監督・脚本は、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」「愛の渦」といった映画でも高い評価を得ている演劇界の鬼才・三浦大輔。演劇サークルで脚本を書き、人を分析するのが得意な拓人。何も考えていないように見えて、着実に内定に近づいていく光太郎。光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せる実直な瑞月。「意識高い系」だが、なかなか結果が出ない理香。就活は決められたルールに乗るだけだと言いながら、焦りを隠せない隆良。22歳・大学生の5人は、それぞれの思いや悩みをSNSに吐き出しながら就職活動に励むが、人間関係は徐々に変化していく。
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就活の追い詰められた状況を鮮明に描いた作品。
と言っても、自分にはその経験がないために実際にどうなのかと言うことがよくわからない。ただ、自分の子たちの苦しみ様を見てきたことで少しだけだがその大変さが理解できたかなという程度。この苦しみは本人でなければわからないだろうと思う。
面接で落とされるごとに、自分を全否定されてそれが繰り返されるということは少し想像力を働かせるだけで、メンタルの弱い私には耐えられそうもない。
この映画はTwitterを中心に回っている。表のアカウントと裏のアカウントを使い分けて、本音と建前を使いこなす主人公。それを知ってかしらずか仲間も上手に絡んでいる。そんな複雑な人間関係につくづく「大変だなぁ」と思うばかり。
自分たちの時代にインターネットがなかったこと、携帯電話さえなかったこと、SNSもなかったことが幸福であるような気がしてきた。便利なようでより人間関係を複雑にしてしまったかもしれない。いつもみんなと繋がっていることで、逆に寂しさを感じるようになってしまったのかもしれない。
「ひとりになりたい時は人混みに入れと言うでしょ?」と妻が言っていたことがある。私はひとりになりたい時は山に行くと思っていたし、そうしてきた。妻は人混みに紛れる方が心が落ち着くという。人それぞれひとりになる場所が違う。Twitterの中で落ち着く人もいるだろうし、その場所が戦場だと言う人もいるだろうし、ズタズタになってそこから逃げ出す人もいるだろう。人それぞれだ。
それでも、この映画の主人公には同情してしまうところがある。「自分は何者のか?」と言う問いに正確に答えられる人なんていないだろう。自分でもわからないし、一番そばにいる人でさえわからない。親でもわからないし、親友でもきっとわからない。
自分って何者だ?
何者であっても関係ないし、お前はこういう人間だと断言してもらっても、それはただその人から見た自分というほんのごく一部分でしかない。そう断言してくれた人にも自分をすべて見せたつもりはないだろうし、自分でもわからない部分を勝手に想像し、推測し断定して話しているに過ぎないからだ。
自分は、その時の環境における一番周囲にとって都合がいい存在に仕立て上げられたものに過ぎないなんだと思うばかりである。
だからそれに疲れたら、その環境から離れればいい。それが可能であればだが。