
ある夏の日の朝、大阪刑務所に仲間の正義と平太を迎えに行った健次は、二人に誘拐の計画を話す。最初は反対する二人だったが、健次のねらいは紀州一の山林王・柳川とし子刀自。さっそく計画を実行する三人。ところがこのおばあちゃんただ者ではなく、やっと山中で拉致に成功した彼らに向かって和歌山県警本部長・井狩の知るところとなれば逃げるのは難しい、と落ち着いた表情で論じ始める始末。こうして三人は刀自に用意させた家に身を隠すことになる。この家は柳川家の元女中頭だったくーちゃんことくらの家だった。そのころ、和歌山県警本部では“刀自誘拐”の連絡が届き、刀自を生涯最大の恩人と敬愛する井狩が火の玉のような勢いで捜査に乗り出して来た。連絡を聞いた刀自の子供たちも次々と柳川家に到着。騒然とした空気の中、刀自救出作戦が開始された。一方、三人は隠れ家で身代金要求の策を練っており、その額が五千万円だと知った刀自はいきなり表情を変え、「大柳川家の当主なんだから百億や!」と三人に言い放つ。それによって誘拐犯と刀自の立場は完全に逆転してしまい、事件はいつしか刀自と井狩との知力を尽くした戦いになっていた。
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この小説は高校1年の時に読んだと思う。天藤真氏の最高傑作。1978年に発表された作品であるが、その5年後には惜しくも亡くなられている。それをこのブログを書くにあたって少し調べていて知った。
この小説を読んでいる時は、読書ってこんなに楽しいのか!というほどワクワクした。すべての本がこんなに楽しかったらいいのにって思った。それくらい楽しくて仕方ない本だった記憶がある。だから本を読まない人には「まずこれ読んでみて!」と勧めたい一冊。今までつまらない本ばかりだったから読書から離れてしまったんだろう?それならこれを読んでご覧。絶対に面白くて、また次の本が読みたくなるから!って言いたいくらいの本だった。
そんなワクワクするストーリーをちゃんと再現した映画になっていた。映画化されると残念なケースもあるが、これはそうでもなくて、これなら十分許せるっていう出来栄えになっている。
おばあちゃん役の北林谷栄さんも日本一のおばあちゃん女優で完璧。実際に、日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞を受賞するなど各映画賞を総なめにした。
刑事の緒形拳もパーフェクト。犯人の若い3人組も風間トオルと西川弘志を含めて上手に演じていた。
テンポもよく飽きさせない。見事な作品になっていた。好きな小説が、上手に映画化されることは本当に喜ばしいことで嬉しい。