久しぶりに芥川龍之介の「羅生門」を読んだ。
青空文庫「羅生門」でタダで読めるし、
YouTubeでは字幕表示で朗読もしてくれる。
しかも、イケメンでイケボイスでおよそ20分。
今さらながら、この物語の時代背景は平安末期であり、
先日読んだ鴨長明の「方丈記」や、現在放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の時代でもある。
冒頭の「旧記によれば」と言うのは、最初の旧記は「方丈記」であり、続いての旧記は「今昔物語」である。
当時の京都・平安京は、戦乱や大火事、竜巻、大地震、飢饉などの天災・人災でかなり荒れた状態だった。
その頃の「羅生門」は、どのあたりかと言うと、
現在の京都駅の八条口(南口)から出て、右(西)に歩いて行くとPHP本社があって、その先を左へ曲がればイオンモール京都。
そして右へ向かえば有名な五重塔で有名な「東寺」。その前の道を更に西に向かった住宅地の公園内に羅生門跡がある。

その羅生門の東にあるのが「東寺」で、同じ距離を西に行ったところには、おそらく「西寺」があったはず。
羅生門から北(上)に上る道が朱雀大路で、今は京都鉄道博物館を含む梅小路公園があり、
もう少し上れば大きな「京都中央卸売市場」がある。
この朱雀大路は、鎌倉時代になると「千本通り」と名前が変わり、今でもその千本通りと呼ばれている。
平安末期にはそんな状態であったので、京も少しずつ東へと移って行くことになる。

↑ 赤い線が当時の「朱雀大路」で、朱雀門は現在の二条駅の少し北で、二条城の少し西の位置になる。
現在の京都御所は右上にあるので、かなり東に移動したことになる。
羅生門に訪れた下人が、このまま泥棒にでもならなきゃ生きていけないと思いつつも、
そこまで落ちぶれたくないと言う僅かな良心との葛藤の後に、
羅生門の中で、死体から髪の毛を抜く老婆を見て、それを許せないと思い蹴飛ばしつつ、
結局は身包み剥いで逃げ去るという行動をとったその下人の心情。
自分もそのような状況になってしまえば、その下人と同じ行動をするのではないだろうかということも危惧してしまう。
この時代の京都が、現在放送されているNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の時代の京都なのである。

中学生か高校生の頃に授業でこの「羅生門」を読んで、
作者はこの作品を通してどんなことを言いたいのか?と言う宿題に、
自分はなんて書いたのか全く覚えていない。
今では、一歩間違えばすぐにこの下人と同じ立場になってしまうこともリアルに感じることが出来る。
それがわかっているからこそ、この羅生門の作品の凄さがヒシヒシと伝わってくる。
方丈記もそうだったが、この「羅生門」も今この年齢で読むと、
以前読んだ時とは全く違う印象を持った。
これからも学生時代に嫌々読まされた作品をもう一度読んでみて、
先生は自分にどんなことを学んで欲しかったのか、
受け止めてみたいと思う。
同じ流れで、「藪の中」を読んでみたが、
あまりの面白さに夢中になってしまった。