
5年前までシバ犬を飼っていた。
14年とちょっと生きた。
死んでしまった時に、その存在の大きさを知った。
室内犬ではなく、玄関の外で飼っていた。
雨の日も、風の日も、雪の日も、嵐の日でも、外だった。
家の中にいたのは、買ってきて1週間ほどだったか。
玄関の中に入れただけで、座敷には上げていない。
寒い日は、震えて凍えていた。
暑い日は、舌を大きく出して息をしていた。
嵐の日は、小屋の中で丸まっていた。
花火大会の日は、大きな音に怯えて震えていた。
死ぬ数ヶ月前までまったく病気はしなかった。
好き嫌いもなかった。食べるものはいつも残飯。
それと、安いドッグフード。
年に数回だけ肉の缶詰。
その時の喜びようはすごかった。

いよいよ死期が近づいた時には、子供たちに召集をかけた。
みんな次々と集まってくれた。
そして、みんなで泣いた。
あぁ、この犬は家族だったんだって思った。
みんな、この犬に悩みを聞いてもらっていた。
全部、黙って聞いてくれた。
そして、顔を舐めて慰めてくれた。
今でも、近所で散歩しているシバ犬を見ると目を細めてしまう。
でも、もうシバ犬を飼うことはないかな。
今から飼っても、ちゃんと最後まで面倒をみられる自信もない。
子供たちの誰かが犬を飼った時に、その犬を愛でるくらいにしておこう。
そう思っている。