GW初日。
大阪・京都・兵庫では緊急事態宣言下にてすべての映画館が休館となった。
いつもなら「今日も貸切状態だね」と言っている行きつけの映画館も、
今日はまさかのほぼ満席。
「こんなの初めてかも」と妻と話しながら指定された席についた。
指定席に座るというのも久しぶりだ。
今回の映画は、第77回ベネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞、第45回トロント国際映画祭でも最高賞の観客賞を受賞するなど高い評価を獲得して賞レースを席巻。第93回アカデミー賞では計6部門でノミネートされ、作品、監督、主演女優賞の3部門を受賞した作品。
「ノマドランド」
「ノマド」とは「漂流する」「遊牧民」という意味らしいが、この映画では「漂流する高齢労働者」のことを指している。
漂流するとは、家を持たずキャンピングカーで移動しながら生活をすること。
劇中「あなたはホームレスになってしまったの?」という問いには、「いいえ、ホームレスではなくて『ハウスレス』よ」と答えている。
リーマンショックによって、仕事と長年暮らした家を失い、夫もすでに病気で無くしている60代女性ファーンは、
荷物をキャンピングカーの詰め込んで車上生活をすることになった。
ある時には「Amazon」の配送センターで働き、季節労働者として移動しながら過酷な現場を渡り歩く生活。
いく先々では、同じようなノマド仲間がいて、その仲間同士助け合って生きていくことになる。
その仲間と過去の話もする。
若かった頃の楽しい思い出。
恋をして、結婚して、子供ができて、子供も巣立っていって、夫に先立たれ、一人になって、家と仕事を失い一人荒野に放り出された。
この映画は、「あなたも一歩間違うとこういうことになるのだよ」という話ではない。
2時間の上映中、じわじわと圧倒的に人生の価値観を揺さぶられる。
誰もいない果てしなく広がる荒野に、一本の果てしない道。そこを走るキャンピングカー。
車の中の狭いキッチンでキャンプの時のような食事を済ませ、
氷点下の中、寒くて狭い寝床で毛布に包まる。
主人公は常に誇り高く、そして自由に暮らしている。
自然の中で毎日を懸命に生きている。
親族から、一緒に住まないか?と言われ、
仲良くなったノマドの男性が、息子夫婦のマイホームで暮らすようになり、そこへ訪れた時も
一緒にここで暮らさないか?と誘いを受ける。
しかし、彼女はそれを受け入れず、一人気高く車上生活を続ける。
見終わって妻との帰り道、
「なかなか身に沁みる話だったね」
人生何が起こるかわからないし、現時点でわざわざ車上生活を選ぶことはないが、
ある条件が揃ってしまえば、その時の状況で現在とは全く違う生活になることは十分ありうること。
その時にも、それがアンラッキーということではなく、
いつでも動物は与えられた環境の中で生きていくしかないということなのだ。
バブルの頃では何も共感はされなかっただろう。
今この時代だからこそ、観る者の心を揺さぶり、
共感を得たからこその数々の栄冠なのだと思った。
この映画を薦めてくれた妻に感謝。
次はこれを観る予定。↓
>第93回アカデミー賞では作品、監督、主演女優賞の3部門を受賞
⇒もう、ご覧になったのですね。
最近、ニュースで見ましたが、
監督さんが中国系の女性ということで、印象に残っています。
ファーザー主演のアンソニー・ホプキンスがアカデミーで主演男優賞にもかかわらず、会場に本人不在だったんだってね。コロナ過で映画上映も少なく、授賞式の視聴率も過去最低、映画界も大変だなw
ノマドランドの中国系監督も政府批判したとかで、中国での報道はほとんど無視だそうな、なんとも・・・
しんちゃんママさん
地味な映画でしたが、2時間ずっとジワジワと今までの価値観を揺さぶられ続けました。
Akiさん
いつもガラガラの映画館がまさかの満席。映画業界も先が読めず大変でしょうねぇ。米中対立が深まると、これからの映画のテーマも変わってくるでしょうね。
ノマドランド、見たらきっと共感を得そうに思います。何があるかわからない、明日は我が身かもしれない。
昨年のアカデミー賞のパラサイトはテレビで、ノマランドも待っていればテレビでやるかなと思います。
住んでいる市には映画館はないので、隣の市に行くのですが、片方は営業していて、片方は休館となり、見たい人はやっている所を探していくのだろうなあ。ゴールデンウイークは稼ぎ時なのに、まあ、映画館だけではないですが。
アプリさん
若い頃にはあまり想像しなかったことですし、想定しても「まぁなんとかなるだろう」と思っていたかもしれません。
映画館は三密に近いですが、会話はしないのでOK。野外キャンプやバーベキューは、三密ではないけど会話するからNG。その線引きはむずかしいところです。
GWの京都は、ひっそりとしているようです。